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第37回淡水翁賞(令和三年度)


第37回淡水翁賞の受賞者が決まりました
 
 去る2022年2月4日(金)に第37回淡水翁賞選考委員会が開催されました。
 淡水翁賞は1983年に若手の金工作家を奨励するために設けられた賞で、今年度で37回を数えます。
 45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。
 今回は何れ劣らぬ素晴らしい作品で8名の作家の応募がありました。
 応募者の作品を見ると、今回は大作がほとんど見られず、小ぶりの作品が多い傾向にありました。新型コロナウィルスの流行など、様々な世情が影響しているのかもしれません。
 素材や技法は様々ですが、何れの応募者も素材に真摯に向き合いながら制作していることが感じられました。
 その中から、第37回淡水翁賞に下記の4名が選出されました。
 選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は、年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。

 最優秀賞
 平野 英史  
「hymnal(賛美歌の、聖歌の)」(鉄)、「revelation(啓示、黙示、驚くべき事実)」(鉄) ほか

【寸評】
鉄の板材を鍛金技法によって造形し、薬品によって酸化させ鉄らしくない不思議な素材感を出しています。細部まで丁寧に仕上げられた作品には力強い生命感と、鉄という素材への愛が感じられます。
hymnal(讃美歌の、聖歌の)
2021年
99×45×30 cm
鉄(錆付け着色)
revelation(啓示、黙示、驚くべき事実)
2021年
90×45×30 cm
鉄(錆付け着色)

 最優秀賞
 畠 春斎
「六角釜」(鉄)、「達摩形鉄瓶」(鉄) ほか

【寸評】
古くからの鋳物産地の伝統を継承し、伝統的な工芸品を現代に活かす新鮮さと品格を合わせ持つ優品です。「用の美」を持ったすばらしい作品と思います。
六角釜
2021年
鉄 
達摩形鉄瓶
2021年

優秀賞
西田 幸子
「天花(てんげ)」(七宝・銀)、「Anticipations of Spring」(銀合金) ほか

【寸評】

 高度な彫金技法に有線七宝が融合され、格調高く、明るさが感じられ、優しさにあふれる作品です。形や姿が安定しているだけでなく、作品ひとつひとつにストーリー性をもたせ、西田氏独自の世界観を表しています。

天花(てんげ)
2021年
32.4×13.6×3.1cm
七宝・銀

Anticipations of Spring
2021年
6.6×6.6×1.5cm
銀合金

優秀賞
田口 史樹
「白の表情」(銀)、「White fragment(Black)」(銀) ほか

【寸評】

 彫金技法である和彫りをもとにした独自の彫を開発し宝石の輝きを銀で作り出しています。銀の表面は無数のダイヤモンドをちりばめたように美しい作品です。また、銀の輝きを失くす技法も研究しており、意欲的な創作活動に今後も期待します。

白の表情
2021年
12×12×4.5cm

White fragment(Black)
2021年
10×9.5×4cm

第37回淡水翁賞選考委員

宮田亮平(金工作家
中川 衛(金工作家、 重要無形文化財保持者)
原田一敏(東京藝術大学名誉教授)