第36回淡水翁賞の受賞者が決まりました
去る2020年2月4日(火)に第36回淡水翁賞選考委員会が開催されました。
淡水翁賞は1983年に若手の金工作家を奨励するために設けられた賞で、今年度で36回を数えます。
45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。
今回は力のある5名の作家の応募がありました。
応募者の作品を見ると、鋳金、彫金、鍛金のそれぞれの技法を駆使した作品でしたが、今回はオブジェ作品が多い傾向にありました。素材や技法は様々ですが、何れの応募者も素材に真摯に向き合いながら制作していることが感じられました。
その中から、第36回淡水翁賞に下記の3名が選出されました。
選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は、年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。
最優秀賞
小田 薫
「はるか いにしえの」(鉄)、「うらら」(鉄、銀箔)ほか
【寸評】
小田氏の作品を見ていると、ふっと遠い記憶のかなたに誘われたような、そんな錯覚を覚える。楽しい思い出も辛い出来事も、記憶の中では少し角が取れて丸くなっているような。そんなふわっとしたイメージが形になると小田氏の作品のようになるのではないか。鉄の素材に真摯に向き合いながら、心象世界を心地よい造形に仕上げている。

はるか いにしえの
2019年
38×30×60
cm
鉄

うらら
2019年
16×33×45
cm
鉄、銀箔
優秀賞
水代 達史
「飾花/camouflage」(銅、真鍮、鉄、金メッキ、銀メッキ、電解着色、漆)ほか
【寸評】
動物の一部が植物になっているのに、違和感のないモチーフ選択の妙、電解着色によるリアルな色使い、細かいところまでおろそかにせず丁寧に造り、全体をバランス良くまとめ上げる造形力の高さ。水代氏の作品は、金属造形ながら生命力にあふれ、人を感動させる力を持っている。

飾花/camouflage
2019年
28×16×29.5
cm
銅、真鍮、鉄、金メッキ、銀メッキ、電解着色、漆
優秀賞
髙橋 賢悟
「the flower funeral -goat-」(アルミニウム)、「origin as a human」(アルミニウム)ほか
【寸評】
死の陰が強ければ強いほど、生の輝きがより強調される。死があるからこそ、生命は尊い。髙橋氏の作品は、自身が思う死生観を具現化したもので、真空加圧鋳造法と現物鋳造法を駆使して、生のリアル(生花の形そのままの造形)と死のリアル(小さな花による頭蓋骨の造形)を見事に融合し造形化している。

the flower funeral -goat-
2019年
24×32×18 cm
アルミニウム

origin as a human
2019年
15×20×14cm
アルミニウム
第36回淡水翁賞選考委員
宮田亮平(金工作家
)
中川 衛(金工作家、 重要無形文化財保持者)
原田一敏(東京藝術大学名誉教授)
中川 衛(金工作家、 重要無形文化財保持者)
原田一敏(東京藝術大学名誉教授)