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第32回淡水翁賞(平成27年度)


第32回淡水翁賞の受賞者が決まりました

 去る2月8日(月)に第32回淡水翁賞選考委員会が開催されました。
 淡水翁賞は1983年に若手金工作家を奨励するために設けられた賞で、今年度で32回を数えます。
 45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。
 今回は力のある9名の作家の応募がありました。応募作品を通覧すると、オブジェ、伝統工芸、クラフトやジュエリーなど、鍛金、鋳金、彫金、七宝など様々な技法を駆使した作品が集まりました。
 その中から、第32回淡水翁賞に下記の3名が選出されました。
 選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は、年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。

佐故龍平「杢目金接合せ花器」

杢目金接合せ花器
2015年
23×16×16cm
銀、銅、赤銅、四分一、黒味銅 
撮影:加賀雅俊(べあもん)

最優秀賞
 佐故 龍平 

「杢目金接合せ花器」(銀、銅、赤銅、四分一、黒味銅)ほか
寸評
佐故氏の作品は、木目金(杢目金)〔種類の異なる金属板を何枚も重ねて、原子拡散反応を応用して接合加工し圧延切削を繰り返して文様を作り出す技法)を用いた作品です。木目金の文様としては、同心円状の文様が基本となりますが、佐故氏の文様は様々な直線、曲線を描いて躍動的であり、異なる金属の色使いも華美にならず調和が取れています。伝統的な技術と現代的な造形感覚が融合した素晴らしい作品です。 


内堀豪「Sketch」

Sketch
2015年
h300×w900×d450mm(table size)
銅、銅ロウ、TIG溶接

優秀賞
内堀 豪 

「Sketch」(銅、銅ロウ、TIG溶接)ほか
寸評
内堀氏の作品は銅を用いた作品で、一見すると実用的な工藝品に見えますが、オブジェとして制作されています。古墳時代の馬具などの復元研究や刀装金具・武具などの保存修復から得られた経験が活かされ、懐かしさや安らぎの風情を纏いながら、それでいてしっかりとした存在感を示しています。傍らにそっと寄り添う作品たちです。


小林秀幹「風の槌跡」
 
風の槌跡
2015年
h.1300×w.400×d.400mm
鉄・チタン

優秀賞
小林 秀幹

「風の槌跡」(鉄、チタン)ほか
寸評
小林氏の作品は、鍛金技法による作品です。例えば、「風の槌跡」は、鉄を素材として、敲き、割り、縛った作品で、槌目を大胆に残し、鉄の質感とも相まって荒々しい印象を与えます。しかし、上部に取り付けられた、カラフルな焼き色を付けたチタンの羽根は、微風でもゆったりと回転します。その対比が却って作品に精神的な魅力を感じさせます。

 


第32回淡水翁賞選考委員

宮田亮平(東京藝術大学学長)
中川 衛(重要無形文化財保持者)
原田一敏(東京藝術大学教授)