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第31回淡水翁賞(平成26年度)


第31回淡水翁賞の受賞者が決まりました

 去る2月5日(木)に第31回淡水翁賞選考委員会が開催されました。
 淡水翁賞は1983年に若手の金工作家を奨励するために設けられた賞で、今年度で31回を数えます。
 45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。
 今回は力のある9名の作家の応募がありました。応募作品を通覧すると、オブジェ、伝統工芸、クラフトやジュエリーなど、鍛金、鋳金、彫金、七宝など様々な技法を駆使した個性豊かな作品が集まりました。
 その中から、第31回淡水翁賞に下記の4名が選出されました。
 選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は、年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。

糸賀英恵「ちりぬるを」

ちりぬるを
H.1780×W.500×D.910mm
銅、ステンレス、お歯黒仕上げ 

最優秀賞
糸賀 英恵

「ちりぬるを」(銅、ステンレス、お歯黒仕上げ)ほか
寸評
糸賀氏の作品は、鍛金技法とTIG溶接技法により、自身がイメージする「うつろい」を表現した作品です。小さな平面体の銅板が、鎚で打たれ、溶接されることによって、たゆたい、拡張し、やがて、一見儚いような、それでいて力強さを宿した造形作品へと昇華されます。銅の素材感を活かしながら、「うつろい」を見事に表現した作品です。


祝迫芳郎「KYO-KEN」

KYO-KEN  ~パグ~ 革ジャン・機関銃
H.220×W.300×D.175mm
真鍮・銅・銀・ステンレス・金属箔・樹脂

最優秀賞
祝迫 芳郎 

「KYO-KEN」シリーズ
(真鍮、銅、銀、ステンレス、金属箔、樹脂)ほか
寸評
祝迫氏の作品は、彫金技法を主に、鍛金技法や樹脂を組み合わせた作品です。ブルドックやチワワ、羊などの可愛らしい動物が、無機質で暴力的な銃やライフル、日本刀を持つ姿は、様々な対立軸を含意しています。有機質:無機質、平和:戦争、安心:恐怖などなど、その二面性こそが祝迫氏の作品の魅力になっています。祝迫氏は多作の作家ながら、その一つ一つの作品の完成度は高く、祝迫氏の技量の確かさを物語っています。 


 
長谷川克義 鋳銅焼肌文水盤「四稜」

鋳銅焼肌文水盤「四稜」
H.44mm ×W.280mm×D.280mm
素材:ブロンズ 表面処理:ミソ焼き 
着色:煮色、オハグロ

優秀賞
長谷川 克義

「鋳銅焼肌文花生『艙』」(青銅(ブロンズ))ほか
寸評
長谷川氏の作品は、蠟型石膏埋没鋳造という鋳金技法で形を作り、ミソ焼きと煮色着色、お歯黒仕上げによって、味わいのある表面に仕上げた作品です。その形は、一見すると、それほど複雑ではありませんが、直線と曲線が織りなす作品全体の形状と、ミソ焼きによる表面の自然な凹凸、煮色着色等による色味のバランスは絶妙で、見る者にほどよい緊張感を与えます。


荒川朋子「Angelo」

Angelo
h.550mm×w.400mm×d.15mm
ステンレススティールバネ線・真鍮線

優秀賞

荒川 朋子
「Angelo」(ステンレス線〈バネ〉、真鍮線)ほか
寸評
荒川氏の作品は、金属線を編んで立体造形にした作品です。荒川氏は、もともと染織作家でしたが、近年は、立体的で構築的な造形を目指し、金属線を使用した作品も数多く制作しています。例えば、Angeloは、素材の特性を活かした、金属線ならではの軽やかで、それでいて柔らかな形の作品で、金属線と光によって作られる影もまた、魅力的な作品の一部となっています。

 


第31回淡水翁賞選考委員

宮田亮平(東京藝術大学学長)
中川 衛(重要無形文化財保持者)
原田一敏(東京藝術大学教授)