公 益 財 団 法 人  美 術 工 芸 振 興 佐 藤 基 金
THE SATOH ARTCRAFT RESEARCH & SCHOLARSHIP FOUNDATION

HOME | 第30回淡水翁賞

第30回淡水翁賞(平成25年度)


第30回淡水翁賞の受賞者が決まりました

 去る2月6日(火)に第30回淡水翁賞選考委員会が開催されました。
 淡水翁賞は1983年に若手の金工作家を奨励するために設けられた賞で、今年度で30回を数えます。
 45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。
 今回は力のある9名の作家の応募がありました。応募作品を通覧すると、オブジェ、伝統工芸、クラフトやジュエリーなど、鍛金、鋳金、彫金、七宝など様々な技法を駆使した個性豊かな作品が集まりました。
 その中から、第30回淡水翁賞に下記の4名が選出されました。
 選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。

岡本佳子 接合せ菓子器「風輝」

接合せ菓子器「風輝」
H.125×W.185×D.140mm
銀・四分一・赤銅
 

最優秀賞
岡本 佳子 

「接合せ菓子器「風輝」」ほか(銀、四分一、赤銅)
寸評
岡本氏の作品は、接合せの技法により文様を作り出した作品である。例えば「風輝」は銀と赤銅、6種類の四分一の板を接合せ、それを糸ノコで曲線的に切り、その間に銀線を挟んで、さらに接合せるという手間のかかる方法を採っている。しかも、器の周囲を16面体にして、その内12面をたたいて曲面にし、独創的な造形作品に仕上げている。技術の高さと、造形の素晴らしさが融合した見事な作品である。


嵯峨卓「ペンギン先生~青空散歩~」

ペンギン先生~青空散歩~
H.1030mm(ペンギン本体670mm)
銅(ペンギン)
銅・鉄・ステンレス(看板)

最優秀賞
 嵯峨 卓 

「ペンギン先生 ~青空散歩~」ほか(銅ほか)
寸評
嵯峨氏の作品は、鍛金技法を用いて、動物や蛙などの生きものを造形化した作品である。「ペンギン先生」はシリーズもので、2013年度の作品は「青空散歩」。腹ばいになったペンギンが目印の「動物飛び出し注意」の看板の前を、一羽のペンギンが、空を見上げながら、ゆっくりと歩いている。その愛らしいペンギンの造形力も素晴らしいが、ネクタイピンから靴紐にいたるまでディテールまで丁寧に作り込んでおり、見事な作品である。


 
 
秋濱克大「天」


H.400mm ×W.300mm×D.50mm
銅・銀メッキ

優秀賞

秋濱 克大 
「幸羽流水」ほか(銅・金メッキほか)
寸評
秋濱氏の作品は、彫金の毛彫りの技法を駆使した羽をモチーフとした作品である。何百、何千と繰り返される毛彫りによって、羽を見事に造形化している。金属でありながら、暖かく軽いようだ。人を装う道具として、見事にその役割を果たしている。素材と造形力がマッチした素晴らしい作品である。


見目未果「小さな動物がやってきた蝶は行ってしまった」

小さな動物がやってきた 
蝶は行ってしまった
1050mm×550mm×500mm
ブロンズ

優秀賞
見目 未果 

「小さな動物がやってきた 蝶は行ってしまった」ほか(ブロンズほか)
寸評
見目氏の作品は、青銅(ブロンズ)を素材とした鋳金による作品である。人物の持つ微妙な表情、指先の細やかな動き、それらを見事に造形化している。実際の人物を写したというより、ブロンズという素材により、また粘土で作られた原型の形状により、より人物の内面が表出している。素材を活かした造形力に感嘆する。
 


第30回淡水翁賞選考委員

宮田亮平(東京藝術大学学長)
中川 衛(金沢美術工芸大学教授)
原田一敏(東京藝術大学教授)