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第29回淡水翁賞(平成24年度)


第29回淡水翁賞の受賞者が決まりました。

 2012年2月12日(火)に第29回淡水翁賞選考委員会が開催されました。淡水翁賞は1983年に若手の金工作家の方を奨励するために設けられた賞で、今回で29回を数えます。45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。  
 今回は力のある7名の作家の応募がありました。応募作品を通覧すると、オブジェ、伝統工芸、クラフトやジュエリーなど、鍛金、鋳金、彫金、七宝など様々な技法を駆使した個性豊かな作品が集まりました。その中から、第29回淡水翁賞に下記の3名が選出されました。
 選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。

粟根仁志「七宝箱『蛍舞う』」

七宝箱「蛍舞う」
H120×W200×D90mm
七宝・銅・銀
 

最優秀賞
粟根 仁志

「七宝箱『蛍舞う』」(七宝釉、銅、銀)
寸評
 粟根氏の作品は、とことん素地(胎)にこだわった作品である。銅板を溶接して箱の形にしているが、特殊な形の箱(素地)を作ったため、「七宝の段階では気負うことなく『美しいものを作る』ことに集中できた」と本人が述べるように、箱の形と七宝の加飾とが見事に調和している。また、十数回の焼成にもかかわらず、蓋と身がぴったりと合わさるように作られており、その技術力の高さも伺える素晴らしい作品である。

 


三枝一将「ひらなす」

ひらなす
89×76×10cm
ブロンズ

最優秀賞
 三枝 一将 

「ひらなす」「やまびこやま2012」(ブロンズほか)
寸評
 三枝氏の作品は、鋳金技法を用いて、身近にあるモチーフを平面てきに造形化し、丁寧な着色と共に独特の存在感を示す。平面的な作品でありながら、驚くほどの立体感を感じさせるのは。金属素材を良く知り、鋳金の特性を最大限活かして造形化しているからであろう。イメージと技術が調和した見事な作品である。


 
服部睦美「ホシヲミアゲル」

ホシヲミアゲル
17 × 17 × 22 mm
銅・真鍮・スワロフスキーラインストーン 

優秀賞
服部 睦美 

「ホシヲミアゲル」ほか(銅、真鍮ほか)
寸評
 
服部氏の作品は、丸みを基調とした空想的なオブジェである。小さなパーツを組み合わせて作品ができあがっているが、どのような小さなパーツもおろそかにせず丁寧に作られており、金属素材の選択も適切で、全体が調和のとれた姿形となっている。服部氏は、金属以外の材料の使用にも積極的で、今後、どのような作品を作り出してゆくのか、大変楽しみである。


第29回淡水翁賞選考委員
宮田亮平(東京藝術大学学長)
中川 衛(金沢美術工芸大学教授)
原田一敏(東京藝術大学教授)