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第27回淡水翁賞(平成22年度)


第27回淡水翁賞の受賞者が決まりました。

2011年2月28日(月)に第27回淡水翁賞選考委員会が開催されました。
 淡水翁賞は1983年に若手の金工作家の方を奨励するために設けられた賞で、今年度で27回を数えます。
 45歳以下という年齢制限を設けていますが、金属素材を使った作品であれば、どのような作品を制作している方でも応募頂けます。
 今回は力のある13名の作家の応募がありました。応募作品を通覧すると、オブジェ作品が比較的多かったのですが、クラフトやジュエリーなどの作品もあり、鍛金、彫金、七宝など様々な技法を駆使した個性豊かな作品が集まりました。
 その中から、第27回淡水翁賞に下記の4名が選出されました。
 選に漏れた方も、造形、技術とも素晴らしいものがありました。淡水翁賞は年齢制限はあるものの、何度でも応募することが出来ますので、再度、チャレンジして頂くことを願っています。

志村和彦「草原」

 草原
h.750×w.1050×d.150mm

鍛造
撮影:丸子成明

優秀賞
志村和彦

草原」「Wrought Iron Drawing―草原―」ほか(鉄)
寸評
 志村氏の作品は、重厚で永遠性を持ちながら朽ちやすい鉄という素材の特徴をしっかり捉え、確かな鍛造技術によって生まれた作品である。鉄を素材としているにも関わらず、重量感を感じず、また骨格のような作品でありながら、その鉄が織りなす空間には血肉が感じられる。素材と制作意図、そして技術が調和した素晴らしい作品である。 


春田幸彦「幸運の行方」

「幸運の行方」 有線七宝白詰草鮟鱇
200×250×150mm
七宝・銀・銅

エスカー(捕食用疑似餌)は銅に緑青で着色、先端がクリップになっており、指輪を着脱することができます。

優秀賞
春田幸彦 

「幸福の行方」「プロポーズ」「重ね有線七宝」ほか(七宝、銅ほか) 
寸評
 春田氏の作品は、アンコウやイカ、タコ、ウナギなど水族をモチーフにした有線七宝の作品である。例えば「プロポーズ」は、銅板打ち出しで成形した可愛らしい形態と七宝釉の透明感ある色彩の配色が調和して、とても素敵な作品になっている。有線七宝を重ねた「重ね有線七宝」の技法など、新たな技法にもチャレンジしており、今後の展開が楽しみである。


押元信幸「風を聞いて」

 風を聞いて
330×150×150mm

鍛金
 

優秀賞
押元信幸

「owls」「風を聞いて」「pakun」(銅)
寸評
 押元氏の作品は、銅を素材として、鍛金の絞り技法によって作り出された作品で、余分な作為の無い暖かみのある曲線は、作品を作りあげたと言うより、作品が作り手の手から自然と生まれた、という印象を抱かせる。梟や兎、犬など鍛金のモチーフとしては珍しいものではないが、他者の作品と一線を画すような光るものを感じさせるところに作者の力量が表れている。
 


古瀬政弘「瑞鳥水注器―尖―」

  瑞鳥水注器ー尖ー
h.322×w.970×d.245mm
銅(銀メッキ)・真鍮

 

特別賞 
古瀬政弘 

「瑞鳥水注器―瞬―」「瑞鳥水注器―尖―」ほか(銅、真鍮ほか)
寸評
 古瀬氏の作品は、主に銅を素材として鍛金と接合により制作されたもので、古代の器物の形態を参考として、銀鍍金に古美仕上げをするなど、一見古典的な作品に見えるが、現代鍛金技法による質感を活かした独特なフォルムは、見る者に清新な印象を与える作品となっている。 


第27回淡水翁賞選考委員
宮田亮平(東京藝術大学学長)
原田一敏(東京藝術大学教授)
中川 衛(金沢美術工芸大学教授)
佐藤一策(財団法人美術工藝振興佐藤基金理事長)
佐藤昭壽(財団法人美術工藝振興佐藤基金理事)